

ベストな選択は禁煙することであるが、紙巻たばこに代わる選択肢の一つである加熱式たばこを、いまや20歳以上の全喫煙者の半数近く*が利用している。その先駆者であり、日本国内の加熱式たばこカテゴリーで大きなシェアを誇るのが、フィリップ モリス インターナショナル(PMI) の「IQOS」だ。日本での発売から10年を迎えた2024年、新シリーズの発売やさまざまなプロモーション施策によってさらに業績を伸ばしている。時代とともにたばこ業界全体が変化を求められる中、同社が打ち出すビジョンが「煙のない社会」だ。喫煙習慣の真逆を表現するかのような企業ビジョンには、IQOSによって世界を変えようとする、壮大で強い意図が込められている。コマーシャル?オペレーションズ部門でバイスプレジデントを勤めるマルコ?ロトンド氏とマーケティング部門のフ?ヨン(リズ)?キム氏に、これまでの10年の道のり、今後の10年を見据えた展望を聞いた。
*2025年第3四半期現在
■マルコ?ロトンドさん/フィリップ モリス ジャパン合同会社 コマーシャル?オペレーションズ バイスプレジデント
■フ?ヨン(リズ)?キムさん/フィリップ モリス ジャパン合同会社 マーケティング ディレクター
大胆な投資と改革で紙巻たばこからの脱却を目指す
― まず、フィリップ モリス ジャパン合同会社が掲げるビジョンについて、お聞かせください。「煙のない社会」とは具体的にどのような社会で、そのためにどのような取組みをされているのでしょうか。
マルコ:具体的には、紙巻たばこからの脱却です。煙のない社会を作るため、2014年から紙巻たばこに代替する製品を提供しています。140億米ドル相当の投資の結果、現在フィリップ モリス インターナショナル(PMI)全体の純売上の40%*以上をIQOSを含む煙の出ない製品が占めています。*2025年第3四半期現在
―?「IQOS」の普及は会社全体のビジョンがあってこそだったのですね。
マルコ:そうですね。取組み当初より、ヤツェック?オルザックPMI CEOは「なぜやるのか」というメッセージを明確に発信していましたし、製品開発だけでなくサプライチェーンや人材育成を含め、会社全体で「煙のない社会」を目指したプラットフォームの基盤を築いてきました。
― 主力製品の入れ替えは市場へのインパクトも大きかったのではないかと思います。20歳以上の加熱式たばこユーザーに受け入れてもらうために、どのような工夫をされたのでしょうか。
リズ:マーケティングの観点からは、20歳以上の消費者の行動理解が最も重要だと考えました。特に製品の研究開発では、新製品を試した消費者がどのように感じるか、満足しているかという点を主眼としていました。また、ブランドパワーを訴求し、共感してもらえる製品であるかという点も重視していました。結果的にはブランドとしての信頼を打ち出し、20歳以上のユーザーの共感を得られたからこそ、「紙巻たばこに火をつける」から「デバイスを使って加熱する」へと行動変容を促すことができたのだと思っています。
― 日本の加熱式たばこの市場は、海外に比べて進んでいるのでしょうか。
マルコ:はい、諸外国に比べて普及率は高いです。理由のひとつは、まず20歳以上のユーザーが新しいイノベーションに対してオープンな姿勢でいてくれること。加熱式たばこのカテゴリーでは日本がベストプラクティスの市場だと認識されているので、海外から多くの関係者が視察に来ています。
― この10年間を振り返って、もともと設定していたゴールに対する達成率はいかがでしょうか。
リズ:日本における進捗は期待以上だと思います。10年前に当社が伝統的な紙巻たばこビジネスからまったく新しいビジネスにシフトする方針を発表した際には、「本当にできるのか」と懐疑的な声もありました。製品が20歳以上の消費者に受け入れられるかどうか、人材のスキルセットなど、変革のためにはさまざまな要素が関係しており、ひとつでも欠けていたら現在のような成功にはつながっていなかったでしょう。
マルコ:現在、日本で加熱式たばこを利用する方の多くが弊社製品を選んでいます。関係者の関心、賛同を得ることはもちろんですが、まったく新しいカテゴリーを開発し、お客様が求める製品を提供するということが最も重要だったのではないかと思います。
もちろん、まだまだ課題はあります。例えば、20歳以上の消費者が求める加熱式たばこのレベルが高まる一方で、規制当局の取組みが追い付いていない部分があります。加熱式たばこ製品には習慣性のあるニコチンが含まれており、リスクがないわけではありませんが、よりよい製品を20歳以上の消費者に届けるためには、当局との調整が引き続き必要だと感じています。

20歳以上のユーザー視点の製品開発とフレキシブルな人材戦略
― 伝統的なたばこ会社から革新的志向の企業に移行する中で、困難や課題に直面することもあったかと思います。どのようにして乗り越えてきたのでしょうか。
マルコ:おっしゃる通り、この取組みは決して簡単ではありませんでした。発売から10年が経ち、数千万人の20歳以上のユーザーがいる今日においても、当社のサイエンスや製品によって得られる利点を信じていない人がいるのです。
そのため、求められる製品を提供し続けていく必要があります。豊富なフレーバーをラインナップしているのも、すべての20歳以上のユーザーにお気に入りを見つけてほしいという想いからです。また、スムーズに使えるデバイスも重要です。フレーバーとデバイスによって20歳以上のユーザーのエクスペリエンスをしっかりと支えていきたいと考えています。
リズ:どういった競争力をつけるべきか、従業員のスキルセットなど、乗り越えるべき壁は社内にもありました。ビジネスのオペレーションモデルやマインドセットを大きく変える必要がありましたが、会社として大きな学びになり、今後の10年を考える上での基盤にもなったと思います。
― マインドセットはどのように変えていったのでしょうか。
マルコ:外部からの採用と内部メンバーの教育という、ふたつのアプローチを組み合わせました。これまで存在しなかった新しいカテゴリー、オペレーション、エクスペリエンスをつくろうとする過程では、トレーニングによってアップグレードできるスキルと、外部から採用して獲得するべき知見、どちらも必要だったからです。
本社所属の社員の4割以上は、この5年以内に入社しています。新たに採用することで、これまで社内になかった知見を得ることができました。一方で、ビジネスナレッジや経験値も求められますし、当社が長年にわたって築いたカルチャーを維持していくことも重要なので、柔軟なマインドセットを持つ人にはぜひ残っていただきたいと思いました。重要なのは、いかに顧客志向に重点を置いて考えられるかです。バランスは非常にデリケートで、神経を使う作業でした。
リズ:加えていうと、ビジネスパートナーの存在があります。かつては各部門のパートナーは2~3社程度でしたが、ビジネスの幅が広がっているため、AIの分野や各販売チャネル、イベントなど、以前と比べてはるか多くのビジネスパートナーと取引するようになりました。いずれも、当社の飛躍的な成長に大きな力を貸してくれています。

― 最後に、今後の展望について伺いたいと思います。おふたりが5年後、10年後に期待する未来図とはどういったものでしょうか。
リズ:現在は日本市場全体において煙の出ない製品と紙巻たばこの販売ベースでのシェアはほぼ5:5です。今後も加熱式たばこを使用される方がさらに増えてくと、まさに私たちが掲げるビジョン「煙のない社会」の実現という素晴らしい成果に近づいていきます。
また、次の10年で煙の出ない製品の種類も増え、最終的には市場の見た目も変わってくるのではないでしょうか。PMIでも、加熱式たばこ、電子たばこ、オーラルパウチなどさまざまな煙の出ない製品を扱っていますから、たばこ製品の使用スタイルもさらに多様化していくのではないかと思います。
マルコ:ビジョンを達成するために、一貫した活動を続けたいと思っています。これまでの10年間で紙巻たばこの販売ベースでのシェアが50%に減ったことは、当社にとってはもちろん、日本社会全体にとっても大きなマイルストーンであると思います。ヤツェックCEOが言う「紙巻たばこは博物館に展示されるものになる」という未来が実現していくのではないかと思います。

文:大貫翔子
撮影:船場拓真
最終更新日:
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