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エルメスの「オリジナル?バーキン」は、なぜ14.7億円で落札されたのか

Image by: FASHIONSNAP

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 ブランド買取専門店「なんぼや」や「アリュー(ALLU)」を展開するバリュエンスジャパンが、俳優の故ジェーン?バーキン(Jane Birkin)氏が実際に使用していた「エルメス(HERM?S)」の「バーキン(BIRKIN)」バッグのオリジナルプロトタイプ 通称“オリジナル?バーキン”を、今年7月10日(フランス?パリ時間)に開催されたサザビーズ(Sotheby’s)のオークションで落札した。落札金額は、858万ユーロ(手数料込み?為替換算ベースで約14.7億円)で、ハンドバッグ史上過去最高額となった。なぜオリジナル?バーキンは最高額で落札されたのか? 今改めて、その「価値」についてバリュエンスホールディングスの嵜本晋輔代表取締役に訊ねた。

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今さら聞けない、「バーキンバッグ」とは?

 まずは基本的なバーキンの特徴についておさらい。その誕生のきっかけとなったのは、1984年にジェーン?バーキン氏と当時のエルメスのジャン=ルイ?デュマ会長が同じ飛行機で隣に乗り合わせたことだった。母親になったばかりだったジェーン氏は、自分のニーズを満たすバッグがなかなか存在しないことを伝えると、デュマ会長はアスティカージュによる縁仕上げのフラップとサドルステッチが施された、しなやかで収納力がある長方形のフォルムのバッグをスケッチ。哺乳瓶のためのスペースも用意されたそのデザインから、ジェーン氏のための「オリジナル?バーキン」が誕生したという。

 形が崩れそうになるほどに荷物を詰め込み、表面にはステッカーを貼ったりキーホルダーをぶら下げたりと、思うままにカスタマイズし存分にバーキンを“使い倒していた”ジェーン氏の姿は度々パパラッチに報じられてきた。過去に放送されていたフジテレビ系列のバラエティ番組「SMAP×SMAP」にゲスト出演した際には、定価でも数百万円するそのバーキンバッグを大胆に踏みつけ「少し使い込んだほうが味が出る」と伝えてSMAPのメンバーにプレゼントした姿が話題となるなど、着飾るためではなく生活の中でバーキンバッグを愛用する同氏の飾らない姿は多くの憧れと共感を集めた。

ジェーン氏が貼っていたステッカーの跡が残るオリジナル?バーキン

「バーキン」はなぜリセール市場で高騰しているのか?

 バーキンが不動の人気を確立している背景には、そのデザインの普遍性と名作バッグの代名詞として認知されるに相応しい「品質の確かさ」が挙げられると嵜本氏。植物タンニンでなめした希少なヘリテージレザー「ヴァッシュ?ナチュレル」は、透明感がありながら時間の経過とともに艶を帯び、美しさを増す。誕生から約40年経った現在まで誕生当時からデザインの変更をほぼ行っていないという洗練されたデザインの完成度の高さも魅力の一つ。職人の手でひとつひとつ手作業で丁寧に作られた丈夫なつくりによって長く使い続けても形が崩れにくく、修理しながら世代を超えて愛用されることで受け継いだ人々の想いが重なり、その魅力は増し続けていると嵜本氏は分析する。

 「ケリー」や「ピコタン」「コンスタンス」といったさまざまな名品バッグを展開しているエルメスの中でも特に「バーキン」が持つ魅力としては、ジェーン氏の要望を叶えるために実現した収納力の高さや、その収納力を支える丈夫さ、カジュアルにもフォーマルにも合わせやすい洗練されたデザインによるバッグとしての実用性の高さにある。そして何より、ジェーン氏の生き方やスタイルそのものを象徴する唯一無二のストーリーを持つバッグであること自体が「持つ理由」や「選ぶ意味」に繋がっていることも特徴だと嵜本氏は話す。

 リセール市場においても、その丈夫な作りから中古になっても状態が悪くなりにくく価値が落ちにくい点が高い評価を受けている。そもそもの生産数が限られていることから、常に需要過多な状況が継続しており、価格が高騰。同時にそうした状況によって「いつの時代も評価されるバッグ」というイメージが確立されており、市場での価値が落ちにくく“長く持っていても値段が崩れにくいバッグ”としても知られるようになったという。

 結果的に14.7億円という価格によってその人気が証明された「オリジナル?バーキン」。長年の需要過多の中で、現在ではジェーン氏のスタイルと相反するように、バーキンバッグを所有していること自体がステータスの象徴のように捉えられている側面もある。落札したオリジナル?バーキンの展示イベントを通して、嵜本氏はこうした状況に対して警鐘を鳴らす。「今回の落札は単に所有することが目的ではなく、その価値を多くの方々に開き、未来へ受け継いでいくための社会的なアクションだと考えています。特別なアイテムをあえて販売せずに展示するのは、そのモノに込められた背景やストーリーを多くの方に知っていただきたいからです。単なる特別なアイテムとして価格や希少性だけで語るのではなく、“なぜ受け継がれ、なぜ今も人を惹きつけるのか”という文脈に触れることで、モノの価値をより深く感じていただけるのではないかと考えています」とし、「今後も展示や発信を続けながら、若い世代の方々がモノを長く大切にするという選択の意味や循環の中で生まれる豊かさ、ストーリーを受け継ぐことの価値を感じ取れる機会を増やし、“価格ではなく意味で選ぶ”という価値観を次世代へ繋げていけることを願っています」と話した。同社による落札は世界中のメディアが大々的に報道。バーキンへの関心の高さが後押しし、同社の思想を世界に発信する機会にもなったと振り返る。

オリジナル?バーキンの展示イベントの会場となったALLU OMOTESANDOでは、バーキン以外にもさまざまな非売品が展示されている。写真はかつてエルメスが販売していたという雛人形(非売品)。

 社会的なサステナビリティへの意識の高まりや質の良いものを長く大切に使うという価値観の広がり、そして若い世代を中心とした「自分らしさを大切にする消費」への意識の高まりから、2030年には4兆円規模になると言われるリセール市場。その中でも特に伸びているのは、安心して購入できること、正しい情報に基づいた取引、そして循環に参加しているという実感を持ちたいというニーズだという。リセール市場で高騰するブランド品はその「資産性」にばかり目が行きがちだが、そのアイテムが生まれた背景や親しまれてきた歴史を知ることは、商品の価格以上の価値を知ると同時に、今後のリセール市場や消費動向を読み解くためにも重要な視点を与えるだろう。

バリュエンスホールディングス 嵜本晋輔代表取締役

最終更新日:

??バリュエンスホールディングス:公式サイト

FASHIONSNAP 編集記者

橋本知佳子

Chikako Hashimoto

東京都出身。映画「下妻物語」、雑誌「装苑」「Zipper」の影響でファッションやものづくりに関心を持ち、美術大学でテキスタイルを専攻。大手印刷会社の企画職を経て、2023年に株式会社レコオーランドに入社。ファッション雑貨、アクセサリー、繊維企業を中心に取材。

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