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神戸発「ビショップ」韓国市場における勝算は? 森威代表に聞くセレクトショップの現在地

ビショップの森威代表取締役社長

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Image by: FASHIONSNAP

ビショップの森威代表取締役社長

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神戸発「ビショップ」韓国市場における勝算は? 森威代表に聞くセレクトショップの現在地

ビショップの森威代表取締役社長

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 神戸発のセレクトショップ「ビショップ(Bshop)」が今年5月、韓国?ソウルに海外1号店をオープンした。創業から30年、“日常着”を軸とした独自のセレクトでファンを獲得し、全国に43店舗を展開。2024年度の売上高は140億円を突破するなど右肩上がりの成長を記録し、今回、満を持しての海外進出に踏み切った。韓国市場における勝算は? 進出の狙いや今後の展望について、森威代表取締役社長に話を聞いた。

創業30年、海外1号店を韓国に

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──まずは今回、このタイミングで韓国進出に至ったきっかけを教えてください。

 過去10年にわたり、韓国で「ダントン(DANTON)」の卸売を行う中で、韓国アパレル市場の成長を間近で見てきました。韓国はトレンドの立ち上がりが日本より早く、いまや韓国発の流行が世界へ広がるケースも珍しくありません。また、かつては「今季はこれ」と決まると街中が同じテイスト一色になるといった単線的なトレンドの流れが一般的でしたが、近年は多様化が進み、ストリートやアウトドア、クラシックなど、さまざまなスタイルが共存しているので、“日常着”を軸にしたビショップの視点も受け入れられる土壌が整ったと感じたのが理由です。

 また、ダントン自体も当初から手応えがあり、年々売上が伸長していましたし、日本の直営店には韓国からのお客様が増え、現地企業から「ビショップを一緒にやらないか」という声をいただくこともありました。市場の成熟とこうした追い風が重なった今こそが、海外進出に最適なタイミングだと判断しました。

ビショップの店舗
ビショップの店舗
ビショップの店舗
ビショップの店舗
ビショップの店舗
ビショップの店舗

ビショップ ハンナム フラッグシップストア(Bshop Hannam Flagship Store)

Image by: ビショップ

 実は、韓国への出店は10年ほど前から構想していたんですが、当時は何から着手すべきか手探りの状態でした。そこで、まず基盤を作るために外国籍のスタッフの採用を積極的に行ったところ、韓国にルーツがあるスタッフが多数加わってくれました。今回の進出は、現地の商習慣や文化に精通したスタッフがいてくれたからこそ、成り立ったと言えます。

──韓国の新店舗はビショップの全店舗を含めても最大規模の面積です。

 そうですね。ただこれは意図していたわけではなく、偶然空きが出た好物件が、結果的にビショップ店舗の中で最大面積だったというだけなんです(笑)。

──出店エリアにはハンナム(漢南)*を選びました。

 当初は、ソウルで今一番ホットとされているソンス(聖水)への出店も検討していましたが、ハンナムの昔ながらの街並みにビショップの社風と似た雰囲気を感じて、出店を決めました。歴史や文化的背景を含めてベストなロケーションを探ることができたのは、韓国出身のスタッフがいてくれたおかげです。

*ハンナム=昔ながらの住宅街や路面店が立ち並ぶエリア。アパレルのショップに加えてレストランやカフェが点在する梨泰院が位置。

──店舗作りにおいて、意識した韓国ならではのポイントはありますか?

 基本的には日本のスタイルを踏襲していて、大きく変更した部分はありません。ただ、これまで日本では「日本から見た世界および日本の良いもの」を紹介してきましたが、韓国では「ビショップ視点で見た韓国の良いもの」を紹介していければと考えています。

──今後は韓国ブランドの取り扱いを増やしていく?

 もちろん必然的に増えると思っています。韓国で見つけたものを日本でも紹介できるようになるので、良い相乗効果が生まれそうです。

──昨年は韓国のブランド「ユノイア(eunoia)」の国内独占販売権を得て、神戸に旗艦店をオープンしました。

 ユノイアは、韓国の伝統衣装であるチマチョゴリを感じさせるアイテムを展開しているブランドです。ソウル出張の際に訪れたショップで出会い、韓国の伝統と洋服を融合したスタイルに惹かれて、取り扱いを始めました。まだまだ認知度は高くないので、日本国内のお客様にも知っていただけるよう、一歩一歩アプローチを重ねていきたいと思っています。

ショップの店内
ショップの店内
ショップの店内

神戸のユノイア店内

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──韓国での、ビショップとしてバイイングするブランドの選定基準を教えてください。

 “日常着”としてのベーシックを軸にしながら、伝統へのリスペクトがあるブランドに惹かれます。デザイナーズブランドの場合は、デザイナーが何を見てきたのか、どんなルーツを持っているのかがコレクションに現れるので、作り手の人となりも重視していますね。

日本市場における課題

──国内での足元の業績はいかがでしょうか。

 コロナ禍では店舗がオープンできないなどの問題があり落ち込んでいましたが、その後は順調に回復し、売上は右肩上がりで推移しています。店舗数の増加に加えて、インバウンドのお客様が増えたことが主な要因です。

 インバウンドはコロナ明け以降年々増えていて、中でも多いのは韓国人のお客様です。「オーラリー(AURALEE)」や「キャプテンサンシャイン(KAPTAIN SUNSHINE)」といったドメスティックブランドを中心に、特定のブランドを目掛けて来店されるお客様が多いですね。

ダントンの店内
ダントンの店内
ダントンの店内

神戸のダントンショップ

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──日本市場における現状の課題は?

 近年、店舗が増えたことによって必要な商品量も増え、仕入れが難しくなっています。ビショップでは、ヨーロッパの小さな工房が手作業で作るような、生産量も納期も限られるアイテムを多く扱っていますが、全店で同じラインナップを揃えるには、各ブランドへの発注量を細かく調整しなければなりません。 会社規模の拡大と、展開アイテムのクオリティの維持を両立させることが、直近の大きな課題です。

──2019年には、イギリスのバッグブランド「ブレディ(Brady)」の経営権を継承しています。この動きにも、そうした背景があったのでしょうか?

 ブレディは、私たちが買収しなければ、イギリスの工場がなくなってしまう可能性がありました。歴史あるバッグを後世に残したいという思いと、30年間取引を続けてきたブランドに恩返しをしたいという思いから買収を決めました。昨年9月からパリのボン?マルシェ百貨店で取り扱っていただけているほか、アメリカやヨーロッパのお店にも置いていただけることが増えていて好調です。

店頭に並んだバッグ
店頭に並んだバッグ

ブレディーのバッグ

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SNSが普及しても「お店第一」 セレクトショップの存在意義とは

──ビショップはフェスを開催するなど、ファッション以外の取り組みにも積極的です。最近は衣食住の要素を掛け合わせたセレクトショップが増えていますが、この動きについてどう思いますか?

 私たちにとって、衣服と他の要素を包括して提供するのは当たり前のことで、最近のトレンドだという感覚はありません。私たちは創業時から「服=暮らしの道具」という考え方で事業を組み立ててきました。服を着る瞬間だけでなく「その服を着て過ごす時間や空間まで提案したい」という思いをもとに、1999年にカフェレストランを、2003年にホテルを開業しました。記念日に良いレストランに行くときに着るような特別なドレスではなく“日常着”を扱うからこそ、日々の延長線上にある滞在体験を整えることで、お客様の生活をより豊かにできると考えたんです。

 また、フェスといえばどんなミュージシャンが出演するのか、といった考えが先行しがちですが、私たちは普段お付き合いのあるブランドや飲食店に出店してもらったりといった「音楽以外のファシリティをどれだけ揃えるか」を第一に考えました。ファッションの延長線上のコンテンツとして、来てくれるお客様だけではなく、私たち自身も楽しめる形を追求した結果、その先にあったものがフェスだったという感覚です。

ビショップの森威代表取締役社長

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 そのほかにも、ファッション以外の取り組みとしてヴィッセル神戸のサポートを行っていますが、「お店の売上を上げたいから」という理由ではなく、かつて「ファッションの街」とされていた神戸からアパレル企業が減ってきている現状を踏まえ、神戸のローカリズムを大事にしたいという思いから、地域に根付いたヴィッセルのサポートを決めました。これら全てに共通しているのは「自分がお客さんだったら何が楽しいか」を最優先にしているということ。常に参加する側の目線に立って考えるようにしています。

──改めて、多くのセレクトショップがある中で、ビショップならではの強みとは?

 私たちが大事にしているのは、“普遍的で日常に根ざした良いもの”を提供すること。もちろん、トレンドも大事ですが、そればかりを追いかけるのではなく、トレンドとのバランスを考えながら“時代を超えていけるベーシック”を独自の視点で選び続けてきた歴史と実績が、私たちの強みです。常に変わらないスタイルだからこそ、消費者にとってもこの「ビショップらしさ」が安心感につながっているのかもしれません。

 店舗作りにおいても“日常の延長線上”のような居心地の良い空間を意識しています。さまざまな人の日常に馴染むショップを追求した結果、顧客層は下は20代から上は90代まで。幅広い年齢層の方に愛していただけているという実感があります。

ビショップの店頭

ビショップが展開する、シーズン毎に新しい企画を取り入れる神戸のコンセプトショップ「ABOUT」

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── 近年はECやSNSの発達により、家にいながらでも自分好みの情報や商品だけを選び取れる時代になりました。そんな中、実店舗ならではの価値や役割をどう捉えていますか?

 SNS上では、アルゴリズムによって自分の好みにコントロールされた情報ばかりが表示されるようになり、偶発的な出会いのようなものが少なくなっているように感じます。たとえば、コロナ期間中は売上第一でインスタライブなどのライブストリーミングを実施するショップが増えましたが、やればやるほど、どのお店も画一化されていってしまった印象で、「自分が消費者だったらあまり楽しくないだろうな」と常々感じていました。

 セレクトショップの良さは、さまざまなブランドのアイテムを我々オーナーの世界観で編集できること。店舗は、我々ならではの目線でセレクトした商品を直接手に取っていただける場所ですし、ビショップがここまで大きくなったのも、店舗があったから。どんなにSNSが発展しても、私たちは「お店第一」の考えです。もちろんオンライン上での発信を無下にしているわけではありませんが、あくまでも店舗ありきで、SNSではリアルなスタッフの声や思いの発信に注力しています。

ビショップ 神戸本店

ビショップ 神戸本店

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──改めて、創業30年を迎えた今後の展望を聞かせてください。

 これまで、具体的な数値目標を立てて運営してきたわけではなく「こういうお店があったらいいな」ということを考えながら歩んできました。これからもその姿勢は変わらず、一歩一歩着実に、ビショップの哲学を伝えられるショップを作っていきたいですし、強みである輸入販売や卸も強化していきたいと考えています。韓国への出店を皮切りに、アジアをはじめ、北米やヨーロッパといった諸地域への展開も視野に入れているので、ご期待ください。

ビショップの森威代表取締役社長

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最終更新日:

張替美希

Miki Harigae

茨城県出身。得意の英語を生かし外大に進学するも、幼少期から抱いていたファッション雑誌への憧れから、ライターを志す。大学卒業後、2022年に株式会社レコオーランドに入社。主にスポーツとファッションの領域で記事執筆を担当する。趣味はアイドル鑑賞で、エビ中ファミリー(私立恵比寿中学のファンの総称)歴は10年。週末はライブに握手会に大忙し。

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ビショップの森威代表取締役社長

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