デパコス?ドラコスを問わず、さまざまなコスメに配合されている「ナイアシンアミド」。成分連載の第7回は、そんなナイアシンアミドについて、コーセー研究員の平昌宏さんに聞きました。シミやシワだけでなく、多種多様な肌悩みにアプローチできる理由とは!?
2004年の入社以来、皮膚のメカニズムと有用成分の開発に関する研究を続け、数多くの商品を生み出してきたベテラン研究員。肌への効果を実証するエビデンス研究の一方で、生活者に分かりやすく美容情報を伝える、サイエンスコミュニケーションにおいても活躍中。
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身体に欠かせない、500以上の酵素反応に関係する成分

FASHIONSNAP
「ナイアシンアミド」って、色んなコスメに配合されていますよね。
そうですね。ナイアシンアミドは、水溶性ビタミンの一種として、これまで世界各国で研究されてきました。ナイアシンアミドとニコチン酸を総称して、「ビタミンB?」と呼びます。

平氏
【ビタミンB?(ナイアシン)】

ナイアシンアミドとニコチン酸は非常によく似た構造を有している。体内で相互に変換され、ほぼ同じ役割を担うため、まとめてビタミンB?(ナイアシン)と呼ばれる。出典/コーセー

FASHIONSNAP
ナイアシンアミドってビタミンB?なんですね。どんな働きがあるんですか?
ビタミンB?は、エネルギーの産生や糖質?脂質の代謝、DNAの修復など、「500種類以上の酵素反応」に関わるといわれています。身体にとって、欠かせない存在ですね。

平氏

FASHIONSNAP
足りなくなるとどうなるのですか?
ビタミンは食事から取り入れる必要がありますが、ビタミンB?の場合、普通に生活している限り、まず足りなくなることはありません。赤みの肉や、魚?豆類などのタンパク質、穀物など、日常的に口にする食材に多く含まれているからです。

平氏
肌におけるナイアシンアミドの役割とは?

FASHIONSNAP
身体に欠かせないことは分かりましたが、「ナイアシンアミドと肌との関係」が気になります。
先ほどお話ししたエネルギーの産生や、糖質?脂質の代謝は、ターンオーバーや皮脂の産生に関係しています。まれにナイアシンアミドが不足すると、皮膚炎や口内炎などが生じることもあるんです。

平氏

FASHIONSNAP
そうなんですね。ナイアシンアミドって「シミ」と「シワ」に効くイメージがありました。
その認識も間違いではありません。実はナイアシンアミドが医薬部外品の有効成分として承認された効果は、「3つ」あるんです。「シワ改善」、「肌荒れ防止」、「メラニンの生成を抑え、シミそばかすを防ぐ」働きです。

平氏
【現在報告されているナイアシンアミドの肌への効果】



出典/コーセー

FASHIONSNAP
「肌荒れ」は知りませんでした。3つも効果があるですね!
肌荒れに関しては、すでに90年代から注目されていました。ナイアシンアミドは研究の歴史が長い成分ですので、それ以外にも肌に対するさまざまな効果が報告されています。

平氏

FASHIONSNAP
赤みやニキビもケアしてくれるんですね。
ナイアシンアミドの特徴は、一言でいうと「マルチファンクション」、つまり多機能なことです。

平氏
シミとシワの両方に効くのはなぜ?
とはいえ、ナイアシンアミドが注目される理由は、やはり「シミ」と「シワ」の両方に効く点ではないかと思います。

平氏

FASHIONSNAP
両方ともメジャーな肌悩みですよね。でも、シミとシワって全然違うのに、どうして両方に効くのか不思議です。
まずシミについて説明しますと、紫外線を浴びてからシミが定着するまでには、複数のステップがあるんです。下の図の①~⑦ですね。

平氏
【色素沈着のメカニズム】

基底膜にあるメラノサイトでメラニンが作られ、このメラニンが詰まった袋(メラノソーム)が表皮細胞(ケラチノサイト)に受け渡される。メラノソームは本来ターンオーバーで排出されるが、肌に蓄積されることでシミとして目立つようになる。出典/コーセー
ナイアシンアミドは、このシミ生成プロセスの中で「表皮細胞へのメラノソーム受け渡し」を防ぐ働きがあります。ビタミンCやコウジ酸といった他の美白有効成分はメラニン生成の初期段階をブロックしますので、ナイアシンアミドと組み合わせると、より効率良くシミをケアするという考え方もあります。

平氏

FASHIONSNAP
確かに複数のプロセスに働くことで、効率良くケアできそう!

平氏
シワ改善についても、同様の考え方が当てはまります。シワの原因の1つは、真皮においてコラーゲンがダメージを受けること。さらに表皮細胞の機能が低下することです。ナイアシンアミドは、この真皮と表皮の両方にアプローチする成分なんです。

ナイアシンアミドは、真皮において線維芽細胞に働きかけ、コラーゲンの生成を促進。表皮においては細胞の増殖と分化を促し、肌をふっくらと保つ。出典/コーセー
ナイアシンアミド配合のコスメは、どう選ぶべき?

FASHIONSNAP
素朴なギモンですが、シワ用とシミ用のコスメに配合されたナイアシンアミドは、それぞれ違いがあるのですか?
化合物としては同じです。

平氏

FASHIONSNAP
じゃあシワ用のコスメを使うと、実はシミに効いてる可能性も…?
成分の働きという視点では、ナイアシンアミドはメラニンにもシワにもアプローチする機能を持っています。ただし商品全体としての使用感やその他の配合成分も含め、シワ用?シミ用に最適に処方設計されていますので、目的に合わせて選ぶことが大切ですね。それとはまた別の視点で、「化粧品の効果効能」は、医薬部外品の承認を得て初めて表示できる決まりなのです。ですので、近年では「シミ予防」と「シワ改善」の両方で承認を得た製品が増えたように感じます。

平氏

FASHIONSNAP
確かに、シミとシワに効くって表示されたものが多い印象です。百貨店コスメからドラックストアコスメまで色々なコスメがありますが、どれを選ぶのが正解ですか?
一定の効果と安全性が確認されているという意味では、「医薬部外品」がおすすめです。

平氏

FASHIONSNAP
「医薬部外品」ではない、ナイアシンアミド配合のコスメもあるのですか?
あります。ナイアシンアミドは一般的な「化粧品」への配合も認められています。医薬部外品は濃度にルールが定められていますが、化粧品には特に定められていません。

平氏

FASHIONSNAP
ということは、化粧品のほうがナイアシンアミドを高濃度配合できるということですか?
そうですね、中にはそのような商品もあります。ただし、濃度が高いほどいいかというと、一概にそうとはいえないんです。どんな成分にも「効果のある配合量」が存在し、医薬部外品は「適切な濃度」で配合されていると考えて頂けたら。濃度が上がると、肌に合わない人が出る可能性もあります。

平氏
年齢や肌質を問わず使える「美容成分の優等生」

FASHIONSNAP
ナイアシンアミドが合っているのは、どんな肌タイプですか?
ニキビ、肌荒れ、シミ、シワなどさまざまな肌悩みにアプローチする成分ですから、年齢を問わず、どんな肌タイプの方にもお使い頂けます。皮脂や肌荒れをケアするという意味では、男性にもおすすめです。

平氏

FASHIONSNAP
確かに多機能な成分は、男性や面倒くさがりな人も重宝しそうです(笑)。逆に、ナイアシンアミドが合わない肌タイプや、併用NGな成分はありますか?
私が知る限りは特にありません。ナイアシンアミドは安定性に優れ、他の成分とも“仲良く”できる「成分の優等生」なんです。

平氏

FASHIONSNAP
本当に優等生ですね。敏感肌でも使えると聞いたことがあります。
敏感肌の場合は「1つの成分が安全」というより、「製品全体として安全に使える」ことのほうが大切です。敏感肌テスト済みや、低刺激設計という表示があるものを選んで下さい。一方で、確かにナイアシンアミドは安全性に優れ、化粧水やクリームなど、どんなアイテムにも配合しやすい成分です。感触の好みや、「続けやすい」という視点でアイテムを選び、毎日のお手入れに取り入れていただけたらと思います。

平氏
(企画?編集:FASHIONSNAP)
最終更新日:
■成分連載
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- 第7回(上):シミ?シワ?肌荒れ、3つの肌悩みに効く優等生 話題の「ナイアシンアミド」ってどんな成分?(本記事)
- 第7回(下):注目の「ナイアシンアミド」コスメ6選 専門家に賢い選び方を聞いた
日本大学芸術学部卒業後、女性誌の美容班アシスタントを経て独立。雑誌、広告、WEBなどで美容記事を執筆している。担当分野はスキンケア、メイク、ヘアケア、フレグランス、美容医療など幅広く、丹念な取材をもとにしたわかりやすい記事に定評がある。温泉や銭湯をこよなく愛する入浴Lover。
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