ADVERTISING

ニッポンザイチェン、ニイハオ上海【コラム連載 - ニイハオ、ザイチェン vol.18】

ニイハオ、ザイチェン メインヴィジュアル
ニイハオ、ザイチェン メインヴィジュアル

ニッポンザイチェン、ニイハオ上海【コラム連載 - ニイハオ、ザイチェン vol.18】

ニイハオ、ザイチェン メインヴィジュアル

東コレデザイナー、海外での企画生産を経てアパレルメーカーのアジア展開を担当する佐藤秀昭氏の視点から、中国でいま起こっていることを週1回更新でお届けするコラム連載「ニイハオ、ザイチェン」が期間限定で復活。2ヶ月ぶりに舞い降りた上海の地で待ち受けていたのは––。

(文?佐藤秀昭)

ADVERTISING

 「ニッポン、ザイチェン。」

 天気予報士が「真夏のピークは去った」と言っていた8月の終わりのことだ。僕は満員御礼の飛行機で再び上海に向かっていた。今回は1ヶ月ほどの出張となる。飛行機の窓に映る中国の地図の端っこはオレンジ色の夕闇に包まれていた。聞き間違えであって欲しかったが、現地の気温は35℃とアナウンスされた。

 2ヶ月ぶりの浦東空港は漢方と埃が入り混じったような乾いた匂いがした。しかし、その余韻を噛みしめる間もなく、白い防護服の職員からPCR検査を受けるように促される。一歩空港の外に出ると小籠包の蓋を開けたときのような熱気で額に汗が滲んだ。

PCR検査会場

 検査が終わり、バス停の前のパイプ椅子に座る。キリンジの「エイリアンズ」を両耳に突っ込む。いつまで経っても慣れない痛みには、聞き慣れたメロディが一番の処方箋だ。

キリンジ「エイリアンズ」

 黒い夜の帳が下りる頃に修学旅行のようなバスに乗り込む。そしてバイパスをぐるぐると回り、ようやくホテルに到着した。ふと腕時計に目をやると、日付が今日か明日で迷っていた。

バイパス

 バスの前に並んだスーツケースは目の前にシャチが飛びこんだのかというくらい消毒液で濡れていて、鼻をつく臭いがした。指定された部屋に入りドアを閉じる。ここから出られるのは10日後だ。市民はいまだ毎日のようにPCR検査を受け、部分的に封鎖されている地域やマンションもある。

 そう。中国のゼロコロナ政策は今なお続いている。あのロックダウンから5ヶ月ぶり3回目となる僕の隔離生活がこうして始まった。

◇ ◇ ◇

 荷解きが終わると、中国の草木も眠る丑三つ時になっていた。前回の隔離生活では、隔離シェフの料理をあるがまま堪能したが、今回は日本から少しの食材と調味料を持ち込んだ。

 星も月も見えない窓の外の闇を前に、小さなポータブルのスピーカーから「エイリアンズ」のイントロがまた流れる。蕎麦を手繰りながら、そういえば映画「エイリアン」に出てきた猫のジョーンズは無事に地球に戻れたんだっけ、とふと気になった。

 またここで上海の日々を綴っていこう。
 「ニイハオ、上海。」

>>次回は9月19日(月?祝)に公開予定

佐藤 秀昭

Hideaki Sato

群馬県桐生市出身。早稲田大学第一文学部卒業。在学中に、友人とブランド「トウキョウリッパー(TOKYO RIPPER)」を設立し、卒業と同年に東京コレクションにデビュー。ブランド休止後、下町のOEMメーカー、雇われ社長、繊維商社のM&A部門を経て、現在はレディースアパレルメーカーの海外事業本部に勤務。主に中国、アジアでの自社ブランド展開に従事。家族と猫を日本に残し、2021年9月からしばらくの間、上海長期出張中。

最終更新日:

ADVERTISING

現在の人気記事

NEWS LETTERニュースレター

人気のお買いモノ記事

公式SNSアカウント