スニダンベースの内部
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今やすっかり、現代人の生活に定着しているフリマアプリ。2012年に日本初のフリマアプリ「フリル(現?ラクマ)」が誕生してから約10年、市場規模は右肩上がりで伸び続け、2023年には国内CtoCのEC取引額が2兆4817億円に達しました。メルカリの調査によると、「フリマアプリの利用経験がある」と答えたのは2人に1人にのぼるなど、日々のショッピングにおいて“当たり前”の選択肢になりつつあります。
一方で、市場の盛り上がりと比例するように懸念が高まっているのが、偽造品の流通です。スニーカーやトレーディングカードなど、希少性が価格を押し上げるアイテムでは、定価を大きく上回る「プレ値(プレミア値)」が付きやすく、偽造品が紛れ込む余地が広がっており、消費生活センターへの関連相談件数は、この10年でおよそ20倍に増えたと報告されています。
そんな課題を持つ二次流通市場において、独自の鑑定方法で偽造品の真贋鑑定を行っているのが、フリマアプリ「スニーカーダンク(SNKRDUNK、以下スニダン)」。約70人の鑑定士が在籍する鑑定拠点「スニダンベース」では、巧妙化する偽造技術と向き合い、鑑定プロセスを日々アップデートしています。本稿では、その現場に潜入! 市場の現状と鑑定の最前線を追いました。
■スニダンとは
スニーカー、トレーディングカード、アパレルに特化したフリマアプリ。注目度の高い新作のアイテムから、レアな古着や中古アイテムまで、幅広く揃えています。出品されている商品はすべてプロの鑑定士が確認し、正規品を保証する「真贋鑑定」を実施。全額保証付きで、ユーザーが安心?安全に取引できるプラットフォームを提供しています。
目次
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多発する偽装品詐欺を未然に阻止、日本最大級の真贋鑑定拠点「スニダンベース」とは?


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近年、フリマアプリを中心に多発している「偽造品詐欺」。ユーザー同士が直接やりとりをすることで、偽造品の被害や「購入したものと全く異なるものが届いた」といったケースが多発しています。これらの問題に立ち向かうべく、スニダンベースでは、ユーザーから出品された商品を全て鑑定。商品に問題がないことが確認できた時点で取引が成立するため、偽造品詐欺が発生しにくいシステムとなっています。出品者と購入者のやり取りは一切不要で、スニダンが仲介に入るため、ユーザー間のトラブルを未然に防いでいるのだそうです。
スニダンは、東京に2ヶ所、大阪に1ヶ所の計3ヶ所に鑑定拠点を配置。数万件以上の鑑定実績を持つプロの鑑定士が100人以上在籍し、ユーザーの安全な取引を支えています。鑑定精度は99.96%。これまでに集積した正規品と偽造品のデータベースをもとに、高精度の真贋鑑定を可能にしています。
◆鑑定士の育成体制も整備
スニダンベースは、未経験からプロの鑑定士を育てる環境も整っています。鑑定士は見習いからキャリアをスタート。半年から1年間のトレーニングの後、試験に合格することで、一人前として認められます。鑑定士は認可を受けた後も、月に一度は必ず試験を行うのだそうです。
鑑定の流れ
いざ、スニダンベースの内部に潜入!鑑定部門の小林凌マネージャーの解説のもと、工場をセクションごとに探索し、鑑定現場のリアルを紐解きます。
検品


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最初の工程として行われるのが、出品者から送られてきた荷物の検品。一つひとつ荷物の中身をチェックしながら、出品者側で事前に登録された商品情報と一致しているかどうかを目視で確認します。特典のキーホルダーや付属のシューレースなどがある場合には、補足情報を入力。問題がなければ、商品は次の工程へと送られます。

荷物に付属のバーコードをスキャンすると、伝票番号に紐づいたデータがPC上に表示され、出品者情報や商品内容を瞬時に照合できます。小林さんによると、1日あたりの納品数は数千にのぼる日もあるのだとか。
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仕分け
調査を終えた商品は、鑑定に進む前に、真贋レベル(鑑定の難易度)ごとに分けられます。難易度は★1?5の5段階。★1?3は通常の鑑定士が、★4以上はベテランの鑑定士が担当する商品を指し、偽造品が多く出回るものほど、真贋レベルが高くなるのだそうです。



真贋レベルごとに仕分けられたトレーディングカード。「素体」「PSA」「BGS」「ARS」のカテゴリーについては、後ほど詳しく解説します。
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真贋鑑定
仕分けを終えた商品は、いよいよ核となる真贋鑑定に回されます。ここからは、スニダンで主に取り扱っている「スニーカー」「アパレル」「ホビー」の3つのカテゴリーに分けて見ていきましょう。
スニーカー


スニーカーの真贋鑑定では、まず付属のシューズボックスのラベルをチェック。正規品のラベルには、メーカー側が出している「RFIDタグ」と呼ばれる商品の識別番号が内蔵されていて、専用の端末でスキャンすることで表示されます。まずは、表示された番号がメーカーの正規番号と一致していることを確認します。

小林さん
一昔前の偽造品は、そもそもRFIDが搭載されていないことがほとんどでしたが、最近では搭載されているケースも増えてきました。文字コードも本物のように巧妙に作られていたりと、日々技術が進化しています。
グローバルで展開される商品は、販売地域によってタグの仕様が異なる場合もあるのだそう。同じ製品でも、メキシコで販売されたものとベトナムで販売されたものでは付属タグが異なるため、各国の仕様をすべて把握する必要があり、鑑定の難易度を上げています。
シューズボックスの審査を通過した商品は、その後、鑑定士の目視による真贋鑑定に移ります。商品の状態とともに、細かいステッチやプリントなどをチェック。



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ちなみに、真贋レベルが★5のアイテムは、必ず2人体制でダブルチェックをしながら鑑定を行っているのだそうです。

スタッフが商品に触れる作業場には、必ずカメラが設置されています。不手際があった場合に遡って確認ができるようになっているのだそうで、返品詐欺の防止に役立っています。
アパレル
アパレルカテゴリーでは、「シュプリーム(Supreme)」をはじめとするストリートブランドを中心に取り扱っています。発売前のコレクションでも、発表時に人気が出ると判断されたアイテムはすぐに偽造品が出回ることから、真贋レベルを上げて対応しているのだそうです。
■アパレルアイテムの鑑定手順





真贋レベル★4のシュプリームのフーディー。まずは出品情報とアイテムが一致しているかどうかを確認します。
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中古の取引の場合には、洗濯の回数によってプリントが薄くなっていたりと、ダメージによって判断が難しいため、ベテランの鑑定士が担当することが多いのだそう。真贋鑑定に加えて、「5回の着用」といった申告の妥当性もチェックします。
また、新品として出品された商品の場合は、真偽を確認するために匂いを嗅ぐことも。たばこの香りやカビ臭さをを感じた場合には、出品者に確認をするケースがあるのだそうです。

小林さん
シュプリームの場合、店内で焚いているお香の匂いがするものは一次流通時の状態と判断し、鑑定基準内としています。
ホビー


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続いては、近年取引が増えているというトレーディングカードをはじめとするホビーカテゴリー。アパレルやスニーカーとは異なり、トレーディングカードの多くは、すでに別の鑑定機関で正規品として認められた(と主張されている)ものが出品されます。鑑定機関の種類もさまざまで、主要だとされているのが「PSA」「BGS」「ARS」の3つ。すでにいずれかの機関で正規品として認められている商品は、各機関の専用ケースに入った状態で出品されるため、それぞれ分けて鑑定が行われます。ここでは、更に細かく鑑定済み品、鑑定を受けていない開封済み品、未開封の3種類の鑑定方法を見ていきます。
◆鑑定済み品の場合


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鑑定済み品は仕様上、ケースから取り出すことができません。スニダンの鑑定では、ケースの上から、事前に出品者側で登録された写真と商品に間違いがないか、ケースに傷がないかを中心にチェックします。ケースそのものがフェイクであることも少なくないので、ケースのラベルに印字されたシリアルナンバーで偽造品を見分けます。
◆鑑定を受けていない開封済み品(素体)の場合
素体の場合は、カードそのものの真贋鑑定に焦点を当て、カードのデザインのズレや上下の枠の比率や幅、ブラックライトを当てたときに欠けていないかなどを細かくチェックします。
◆未開封の場合


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トレーディングカードは、未開封で出品されることもしばしば。古くなればなるほど資産価値が上がるとされているため、あえて開封せずに保管する人も少なくありません。鑑定時にも封を開けることはできないため、スニダンでは「シュリンク」と呼ばれる包装用のフィルムを専用の精密分析器でチェックし、成分が正規品と98%以上一致した場合のみ、鑑定通過とします。

小林さん
未開封の商品は偽造品のリスクが高く、「購入後に中を開けたら同じ重さのジュースやお菓子が入っていた」という事例も。ビニールだけでは判断がつかない場合や、取引額が高額な場合はX線の機械に通すこともあります。
品質検査

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鑑定を終えた商品は、購入者に発送される前に、品質検査を挟みます。新品の場合には、「新(新品)鑑定」と呼ばれる「商品に傷や汚れがないか」「箱が破れていないか」「包装紙が破れていないか」「付属品が揃っているか」といったポイントをチェック。商品に問題がなくても、箱や包装にわずかな問題を発見した場合には購入者側に確認を取り、購入者が「問題ない」と判断した商品のみ発送されます。

小林さん
商品が本物かどうかをチェックする真贋鑑定は、想像以上に集中力が必要です。一工程の作業カロリーを最小限に抑えるため、品質検査は別の担当者が行うことで、鑑定士が真贋鑑定に集中できる環境を整えています。
梱包
全ての工程を終えたら、最後に梱包作業です。人の手によって一つひとつ手作業で処理することで、送り間違いなどを未然に防いでいます。



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目視では見極められない、X線透過装置&赤外線の実力
ここまでは鑑定士の目による真贋鑑定の流れを追ってきましたが、ここからは、X線透過装置&赤外線カメラによる鑑定現場に密着!スニダンベースでは、目視では確認できない、細かな内部構造の鑑定も行っています。
◆X線透過装置
国内でX線透過装置による鑑定を導入しているのは、スニダンベースのみ。この装置では、主にスニーカーの内部構造を確認することができます。


X線透過装置
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今回は、「ナイキ(NIKE)」の「エア フォース 1」で装置の実力をチェック。商品の断面を確認できるので、目視では行き届かない内部構造の鑑定が可能に。スキャンしたデータは360度回転できるため、さまざまな角度から偽造品の判別が行えます。


専用の台に置いてX線でスキャンを行います。
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◆赤外線カメラ
続いて登場するのは、赤外線カメラ。今回は、正規品と偽造品を並べて実演してもらいました。




「ヒステリックグラマー(HYSTERIC GLAMOUR)」のキャップで検証。一見、同じに見えますが...。
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赤外線カメラを通すことで、染料の違いを瞬時に見極めることができます。ちなみにこのカメラは、警察官が事故現場でブレーキ痕を探す際にも用いられるのだそうです。
より細かい内部構造を確認する際には、マイクロスコープを用いてプリントの乗り方をチェックすることも。一目見ただけでは判別できない細かなポイントを可視化してくれます。




シュプリームのTシャツを使って、マイクロスコープの実力を検証!
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「偽物=ナイキ」時代から一転、二次流通市場の今

スニダンベースに保管されている偽造品の数々
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さまざまな技術を駆使しながら、高精度の鑑定を実現しているスニダン。小林さん曰く、トレンドの移り変わりとともに、二次流通市場も新たなフェーズに移行しているといいます。
ナイキやアディダス、ニューバランスといった定番ブランドが依然として高い支持を集める一方、最近では「プーマ(PUMA)」や「アシックス(asics)」、「ティンバーランド(Timberland)」「オン(On)」「ホカ(HOKA)」といった新興ブランドの取引も活性化。特定のブランドに人気が集中するのではなく、多様なブランドやアイテムが取引される傾向が強まっているのだそうです。

小林さん
以前は一足につき10万円のような、いわゆるプレ値(プレミア値)が付くスニーカーを中心に偽造品が流通し、更にその内訳も「偽物=ナイキ」とも言えるほどナイキ一強でしたが、現在は多様なブランドの偽造品が流通しており、その通説が変わりつつあります。フリマアプリが浸透してからは、プロパーと変わらない値段で取引される他ブランドにも、偽造品が多く出回るようになりました。

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小林さん曰く、アパレルカテゴリーはブランド品に限らず、「需要のあるものはなんでも偽造され、取引される時代」なんだとか。

小林さん
かつては「世界中で売れるもの」に対して偽造品が多く出回るのが一般的でしたが、近年では日本市場をターゲットにしている偽造品業者も出てきており、日本のドメスティックブランドの偽造品が増えています。
■日本国内で流通している偽造品の一部



若者を中心に人気を集めている「マルディ メクルディ(Mardi Mercredi)」のスウェット
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スニダンでは、新規ブランドの取り扱いを開始する前には、必ず事前準備を実施。スニダンのサイトに登録された商品カタログの中からユーザーが選択して出品する方式のため、鑑定チームが把握していない未知の商品が突然出品されることはないとのこと。

小林さん
市場のトレンドを1?2年前から予測し、人気になりそうなブランドは、取引が活発になる前に本物を入手し、鑑定に必要なデータを全て揃えてから取り扱いを始めるようにしています。近年では、ファッション市場での人気が高まっている「オン(On)」や「サロモン(SALOMON)」、「ビルケンシュトック(BIRKENSTOCK)」などがその例です。顧客からのリクエストや市場の盛り上がりを分析し、鑑定チームの準備が整ったものから順次、取り扱いを始めます。
新規ブランドや新作の鑑定は、スニダン鑑定士の中でもキャリアを積んだスペシャリストが所属する「ラボチーム」が担当。鑑定過程でデータを取得したら、全鑑定士が対応できるように情報を共有することで、鑑定の精度を保っているのだそうです。


ラボチームの鑑定現場
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偽造品出品の多くは「悪意なき」ケース
偽造品の流通は加速する一方ですが、スニダンでは、悪意のある偽造品の出品は減少傾向にあるのだとか。

小林さん
鑑定で偽造品と判断されると、出品者側に返送料やキャンセル料といった負担が発生するため、スニダンでは意図的にフェイクを出品するメリットはないんです。
最も多いのは、出品者自身がフリマアプリなどで偽造品と知らずに購入し、不要になったため出品するというパターン。「偽造品と判明した場合、ほとんどの出品者は驚きと落胆を示します。知らないうちに偽造品の加害者になりかけていたというケースが大半なのです」と小林さんは説明します。こうした事例の多さが、スニダンの厳格な鑑定システムの必要性を裏付けています。

鑑定部門 小林凌マネージャー
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投資対象はスニーカーからトレカへ?
スニーカーカテゴリーは、ブランドの多様化により盛り上がりを見せる一方、これまでのように大幅なプレ値がつくことは少なくなっているのが実情。資産や投資目的でスニーカーを収集していた層が、今目をつけているのがトレーディングカードなどのホビーカテゴリーです。

Image by: FASHIONSNAP

小林さん
スニーカーは保管に場所を取るだけでなく、経年劣化で加水分解を起こし、価値が失われてしまうリスクがあります。一方、トレーディングカードは保管も用意で、1枚で数十?数百万円の高値がつくこともあるため、資産として管理しやすいことが理由として考えられます。

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日々変わりゆく二次流通市場。スニダンベースの内部取材を通じて見えてきたのは、巧妙化する偽造技術を上回るスピードで進化を続けながら、消費者の安全を守るスニダンの矜持です。「どれだけ技術が発展しても、最後は人間の目と経験が決め手になる」と小林さん。二次流通市場の健全な発展を支え続ける縁の下の力持ち、スニダンの挑戦は今日も続いています。
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