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【連載ふくびと】第11話 菊池武夫——浅野忠信を起用 短編映画で起死回生

菊池武夫のアトリエ

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Image by: FASHIONSNAP

菊池武夫のアトリエ

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【連載ふくびと】第11話 菊池武夫——浅野忠信を起用 短編映画で起死回生

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第10話からつづく——

 「タケオキクチ(TAKEO KIKUCHI)」を日本を代表するメンズブランドにまで育て上げた菊池武夫。バブル崩壊の影響を受け一時低迷した時も、気鋭の監督と俳優を起用して短編映画(題「wkw/tk/1996@/7’55”hk.net」)を制作するなど、新しい試みにより人気を取り戻してきた。好調に推移していたが、デザイナー信國太志と出会い、2004年にクリエイティブディレクターのポストを引き継いで第一線を退くことを決めた。——「タケオキクチ」のデザイナー菊池武夫が半生を振り返る、連載「ふくびと」第11話

駆け出し俳優だった浅野忠信を起用

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 タケオキクチは、立ち上げから5年ほどでブランドの規模が急拡大しました。自分にとっては成長しているのかわからなくて不思議に思いますが、真剣に取り組めば、ビジネスも大きくなっていくということだと思います。

 ただ、ずっと調子がいいわけではありません。1990年以降は、不景気の影響でブランドも厳しい状況が続きました。そういう時には、何か新しいことを考えないといけない。起死回生をかける気持ちで取り組んだのが映画でした。

 監督には香港のウォン?カーウァイ(Wong Kar Wai)、主演俳優には浅野忠信くんを起用しました。浅野くんは当時まだ若手でしたが、ショーケンと通じるスタイルを持っている人だと感じましたね。アウトサイダーなイメージも共通しているなと。結果として彼に頼んだのは大正解でした。

 ウォン?カーウァイ監督は、シナリオ無しで撮り始めるんですよ。全編を通してセリフがなく、まるで絵のような世界。浅野くんの度胸と冒険心があってこその作品になりましたね。

 1995年に公開した短編映画と、その映像を使ったテレビCMのおかげで、離れていた若い顧客が戻ってきてくれました。経営も盛り返し、危機を脱することができた。そして1990年代の後半には、メンズファッション界において世界でも指折りの売上まで上り続けていったのです。

スタイル画

スタイル画

スタイル画

スタイル画

出会って2分で決めた後継者

 60歳を過ぎた頃、僕が新鮮だと感じるものが、受け手側にとってどう響いているのか疑問に思うことが増えました。タケオキクチがターゲットにしている若い世代に共鳴するものは、その時代の真ん中を生きている人が作るほうがよいのではないか、と。

 そんな頃に、社内のメンバーから紹介されたのがデザイナーの信國太志くんでした。初めて会ったのに、まるで双子のように感じたことを覚えています。顔を見て、少し話をして、2分後には後継者としてスカウトしていました。そして彼も、その場で「やります」と即答してくれたのです。

 2004年、65歳の時にクリエイティブ?ディレクターを信國くんに託しました。僕はその後も在籍はしていましたが、すっかり服作りから離れて、会社にもほとんど行きませんでしたね。

 でも少しずつ、自分が本当に着たいと思う、大人に向けた服を作りたいと思うようになりました。ターゲットは40歳以上。歳を重ねてタケオキクチを卒業していった男性にも着てもらいたい。それで立ち上げたのが「フォーティーカラッツ アンド ゴーニーゴ バイ タケオキクチ(40CARATS&525 by TAKEO KIKUCHI)」です。

 ブランド名にある“40カラット”は、ダイヤモンドで言えば見たこともないような大きさ。そんな大胆な欲望を持つのも面白いと思いました。高級感がありながらも日常で何気なく着られる、大人のカジュアルウェアです。そのディレクションに専念して、タケオキクチには一切口を出さない。でも数年後、再び第一線に戻ってくることになるとは、この頃は思ってもいませんでした。——第12話に続く

2005年、買付先のイタリアにて

2005年、買付先のイタリアにて

TAKEO KIKUCHI アーカイヴ集

2012年から続くサントリー「山崎」とタケオキクチのコラボレーション。クリスタルグラス3種のほか、山崎蒸溜所で販売されているWネームのTシャツやハットなど。

タケオキクチ渋谷明治通り本店の中にある菊池武夫のアトリエにも、好きな車とともにウイスキーボトルとグラスが並んでいる

【毎日更新】第12話「73歳、意を決してカムバック」は3月9日に公開します。

文:一井智香子 / 編集:小湊千恵美
企画?制作:FASHIONSNAP

最終更新日:

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