ADVERTISING

いまや"デカ厚"は古い? さらに小型化すすむ 世界最大の腕時計展示会「ウォッチズ&ワンダーズ」取材記 vol.3

ケース径は「アラウンド35」に

いまや"デカ厚"は古い? さらに小型化すすむ 世界最大の腕時計展示会「ウォッチズ&ワンダーズ」取材記 vol.3

ケース径は「アラウンド35」に

 最近では、腕時計のサイズが小振りになっています。以前は、ケース径が46ミリや48ミリ、もしくはそれ以上の大きくて分厚い時計が流行して、「デカ厚」の呼び方が定着しました。多くのメンズファッション誌では「デカ厚」に「威張りの効く時計」といった見出しをつけて、しばしば特集を組んだものです。私自身は「いやいや、大き過ぎるのは上品ではない。ビジネスパーソンには40ミリ前後の腕時計がおススメです」と言い続けてきました。「デカ厚」腕時計がスーツやジャケットの袖に収まらないという現実的な理由もあって、現在では39ミリや38ミリの「アラウンド40」腕時計が売れています。

取材?文/山本晃弘(ヤマカン)

ADVERTISING

40ミリ? 35ミリ? ケース径の変化

 2025年のウォッチズ&ワンダーズで発表された新作を見ると、腕時計のケース径はさらに小振りになってきました。もっとも象徴的なのは、「IWC」が35ミリ径の「インヂュニア?オートマティック 35」を発表したこと。

IWC「インヂュニア?オートマティック 35」 自動巻き(Cal.47110)、パワーリザーブ42時間、ケース径36ミリ、ステンレススティール。155万4300円

 じつは、IWCは一昨年「インヂュニア?オートマティック 40」を発表して、その年の最大の話題となりました。「パテック フィリップ(PATEK PHILIPPE)」の「ノーチラス」や「オーデマ ピゲ(Audemars Piguet)」の「ロイヤルオーク」でラグジュアリースポーツのジャンルを生み出した天才デザイナー、ジェラルド?ジェンタ(Gérald Genta)がIWCのために1970年代に手掛けた「インヂュニアSL」を復活させたデザインが、2023年に大きな注目を集めた理由。そこから2年を経て、ケース径35ミリと、5ミリ小型化された「インヂュニア?オートマティック 35」が登場したわけです。

 「ロレックス(ROLEX)」からは、人気モデル「オイスター パーペチュアル」に34ミリや31ミリの新作が登場。さすがに31ミリは女性のユーザーに向けたものでしょうが、34ミリの新作は「男性にも売れそう」というのが多くの時計ジャーナリストの意見です。

ロレックス「オイスター パーペチュアル 36」 自動巻き(Cal.3230)、パワーリザーブ約70時間、ケース径36ミリ、ステンレススティール。93万2800円(予価?今春発売予定)

 さらには、飛行機の計器を模したデザインで一世を風靡した「デカ厚」時計の代表格「ベル&ロス(Bell & Ross)」が36ミリの「BR-05」を発表してきたことで、小型化の流れに確信を持ちました。「アラウンド40」から、34ミリ、35ミリ、36ミリといった「アラウンド35」時代に突入です。

ベル&ロス「BR-05」 自動巻き(Cal.329)、パワーリザーブ54時間、ケース径36ミリ、ステンレススティール。64万9000円

日本市場の売れ筋は?

 多くの日本人は腕が細いので、腕時計の小型化はウェルカムでしょう。ジュネーブの取材現場でロレックスの担当者に尋ねると、「すでに現在、売れ筋の中心は36ミリです」という回答。いっぽうで、日本以外の国では小型化の評判はどうなのでしょう。いくつかのブランドで尋ねたところ、「ヨーロッパ市場ではおおむね好評。ただ、身体が大きいお客様が多いアメリカでは苦戦するかもしれません」とのことでした。

 かなり古いヴィンテージ時計を見ると、男性でも33ミリ、34ミリといった腕時計が主流であったのがわかります。私が40年以上前に新品として購入して現在も使っている「ハミルトン(HAMILTON)」の腕時計「カーキ フィールド」も、ケース径は34ミリです。

 最近では、男性と女性が二人で一つの腕時計を使うシェアウォッチの考え方も一般的になってきました。そのあたりも、小型化が進む理由かもしれません。腕時計のサイズ、これからは「アラウンド40」ではなく「アラウンド35」と覚えておいてください。

ヤマモトの見立て

icon

 腕時計の小型化が進む中で、ロレックスの兄弟ブランドである「チューダー(TUDOR)」が逆張りをしてきました。かつて日本でチュードルと呼ばれていたものを、チューダーと呼び方を変えてリブランディングしてから、注目を集め続けています。

 人気を牽引してきた「ブラックベイ」41ミリ、「ブラックベイ 58」は39ミリと、まさに「アラウンド40」のケース径でした。それが、今年のウォッチズ&ワンダーズで発表された新作「ブラックベイ 68」は43ミリと大型化! これは、50万~100万円の価格帯で独り勝ちのチューダーだからこそできる、トレンドの一歩二歩先を行く戦略です。

 「ブラックベイ 68」はパワーリザーブ約70時間、200メートル防水というスペックで、66万3300円。これでは、また、売れないわけがありません。

チューダー「ブラックベイ 68」 自動巻き(Cal.MT5601-U)、パワーリザーブ約70時間、ケース径43mm、ステンレススティール。66万3300円

会場写真?2025 Watches and Wonders Geneva Foundation
※腕時計は未入荷や売り切れの場合もあります。また、為替レートなどの影響で価格が改訂されることがあります。

「ウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブ 2025」取材記

最終更新日:

服飾ジャーナリスト / AERA STYLE MAGAZINE WEB編集長 兼 エグゼクティブエディター

山本晃弘

Teruhiro Yamamoto

「メンズクラブ」で編集者のキャリアをスタートしたのち、「ELLE a table(現ELLE gourmet)」「GQ JAPAN」「アエラスタイルマガジン」の3誌を創刊。2019年にヤマモトカンパニーを設立し、新聞、雑誌、WEBでファッションや腕時計について執筆する傍ら、ブランドの広告制作やコンサルティングを行っている。スイス現地での時計展示会やファクトリー取材は、20年以上にわたる。

ビジネスマンや就活生に着こなしを指南する「服育」アドバイザーとして、また、郷里である岡山のRSK山陽放送でラジオパーソナリティとしても活動中。著書に「仕事ができる人は、小さめのスーツを着ている。」がある。

ADVERTISING

READ ALSO

あわせて読みたい

現在の人気記事

NEWS LETTERニュースレター

人気のお買いモノ記事

公式SNSアカウント