
黒い布製の封筒の中に入っていたのは、フェルト状に圧縮された黒いわた。重なった2枚のわたを開くと「ヨウジヤマモト プールオム(Yohji Yamamoto POUR HOMME)」のブランド名と住所が記されたタグが現れる。これは2025年秋冬コレクションの招待状で、柔らかくてあたたかいわたは、新作コレクションのヒントにもなっていた。
会場は例年通り、パリ3区のヨウジヤマモト パリ本社。木の椅子を並べたシンプルな設計のショー空間は、1984年にパリ?ファッションウィークにデビューした常連ブランドとは思えないほどの小ささで、毎シーズン多くの人が詰め掛けて立ち見客があふれるほどの満員状態。隣の人と肩が触れる距離に、どこか親密な空気がうまれる。
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しんみりと響く女性の歌声をバックに、ゆっくりと登場したファーストルックは、くすんだ灰色のランウェイと同化するグレートーンのセットアップ。ふくらみのある素材にキルティングが施され、ゆとりのあるシルエットに、ボトムにはカーゴパンツ風のサイドポケットが施されている。それに続くスタイルも含めて、ほぼすべてのルックが中綿入りのピースで構成されているのが今シーズンの最大の特徴だ。テーラードジャケットやコート、パンツやシャツも、中綿入りのパテッド仕様となっている。




途中、モデルがランウェイの途中で立ち止まり、おもむろにジャケットを脱いで、次のモデルと交換し合った。男性同士だけではなく、男女で交換し合う様子も。さらには裏表を逆にして着せつけることで、リバーシブルで着られることがわかった。



いつものように、山本耀司 本人の歌声もコレクションを演出。ショーの終盤は、ダークトーンから一転してホワイトがベースとなった。中綿入りの仕様はそのままに、ポリエステルのフィルム素材を用いて、よりスポーティーな印象のスタイルが並ぶ。シューズまでもキルティングが施されていた。




これらを着こなす男たちは、みな個性的で、年齢層も幅広い。実際に様々なバックグラウンドを持つモデルが起用されていた。フィギュラティヴ?ペインターのリュック?タイマンス(Luc Tuymans)、シンガーのマムード(Mahmood)、フォトグラファーでヴィジュアルアーティストのモハメド?ブーロイサ(Mohamed Bourouissa)、バレエダンサーのユーゴ?マルシャン(Hugo Marchand)、フォトグラファーのエリック?ネール(Eric Nehr)、コンテンポラリーアーティストのロバート?モンゴメリー(Robert Montgomery)、俳優のセス?リー(Seth Lee)、アーティストでペインターのジョージ?ルーイ(George Rouy)、アーティストのラフィック?グレイス(Rafik Greiss)、俳優のポール?ハミー(Paul Hamy)と、多彩な顔ぶれだ。












長年連れ添った夫婦のように男女のモデルは身を寄せて肩を抱き合い、ボトルを持ち歩いて水を飲むモデルも。長年着続けているかのように身体に馴染んだ着こなしで、生き様が滲み出ているような表情に惹きつけられる。人間の営みや、人生の歩みを想像させ、心までじんわりとあたためるようなランウェイとなった。



山本耀司
最終更新日:
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