Image by: yushokobayashi
小林裕翔による「ユウショウコバヤシ（yushokobayashi）」が、2026年春夏コレクションをランウェイショー形式で発表した。会場は下北沢の「ADRIFT」。
2026年春夏コレクションのタイトルは「マリオネット（Marionette）」。小林は本作を「怒りのコレクション」と位置づける。一見穏やかな日々の中でも、ふとした瞬間に苛立ちが顔を出し、とりわけ「思うようにできない自分」への怒りは幼少期から変わらず胸の奥に居座り続けてきたという。そうした根源的な感情を創作の起点に、チェコで観たバレエ作品「コッペリア」に潜む不条理さに「腹が立った」体験が重なり、コレクションの方向性が形づくられていったと語った。
ショーでは、「人形師が作った人形が人形師になり、逆に人形師が人形になる」という入れ子構造を持つ「コッペリア」の世界観を演劇的に表現。物語の構造を踏まえながら、その中に潜む“怒り”をファッションとして再構築した。ブランドに対して「可愛い」という声が多く寄せられる中で、以前から「可愛いけど、可愛いだけじゃない」という思いを抱いているという小林。「分かってほしい気持ちと分かられたくない気持ちがある」という相反する感情もまた、同氏の中で"怒り"として存在しており、その複雑な心理をデザインの細部に落とし込んだ。
シフォンやレースといった可憐な素材にはあえてダメージ加工を施し、ふんわりとしたシルエットの中には、粗いコットンや包帯のようなリネンなどの無骨な素材を混合。柔らかな空気の中に違和感を忍ばせた。ソックスやシューズにはボタンや小石、ビジューなどが縫い付けられ、まるで幼い頃に大切にしていた宝箱を当てもなくひっくり返したような、不気味さと懐かしさが同居する。ブランドのアイコンでもあるニットアイテムは、あえてほつれや歪みを残したデザインに。手癖や自由な発想をより重視し、スタッフがフリーハンドで描いたパターンをそのまま採用するなど、より直感的でパーソナルな製作を重視したという。
ショーの中盤では、アーティストのUamiがパフォーマンスを披露。「それでいいわ、心地いいから」という歌詞が響く中、幼い子どもが好きなものだけを選んで身につけたような、ちぐはぐで自由、そして危うい雰囲気を纏ったモデルたちがゆらゆらと歩いた。継ぎ接ぎのワンピースを纏い、憂鬱そうに虚空を見つめるモデルは、まるで彷徨う操り人形。可愛らしさの裏に潜む怒りと孤独を映し出すように、ユウショウコバヤシの「マリオネット」は、繊細で不穏な美しさを放っていた。
なお、同ブランドは、東京都と一般社団法人日本ファッション?ウィーク推進機構（JFWO）が主催する第11回「TOKYO FASHION AWARD 2026」を受賞。今後は同賞のサポートのもと、パリファッションウィーク期間中の展示会出展や、2026年3月開催の「Rakuten Fashion Week TOKYO 2026 A/W」でのコレクション発表などを予定している。
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